2009年07月04日

【えすぱあ:wonder2】最終話-X6:Baby cruising Love

宇宙エレベーターはついに正式に完成。
一般人向けの観光施設としての設備さえ整った。

周囲には宇宙科学館や緑地公園がある。

その緑地公園のベンチにて語り合うふたりの婦人。
その目の前の砂場で遊んでいる男の子と女の子。
おそらく、それぞれがこの婦人たちの子供なのであろう。

ふたりがふと見上げた空の上には宇宙へと続く梯子が架けられている。
風に揺られているかのように微かに揺れる梯子に
遠い空の向こうから宇宙エレベーターが下降してくる気配を感じたのだ。

***

多くの優秀な科学者が常に居住できるほどにまで発展した宇宙ステーション。

その会議室で更なる場所へと向かうための手段、
まったく新しい宇宙船の設計図を大型の電子ディスプレイに映し出すスン兄弟。
熱のこもったプレゼンテーションには多くの質疑応答が繰り広げられた。

新造船の設計図...
そこには[S.T.L]、[A.M.L]、そして[JUDY]、[JEDY]の文字が散見された。

***

宇宙エレベーターで妻が待つ地上へ降りていくスン兄弟。
相変わらず無駄な会話はしないふたり。しかし、もう昔とは違う。
同じ場所を目指して共に生きているのだから
もはや言葉であれやこれやと無駄に確認する必要はないのだ。

ふいに矧枷のケータイが鳴る。
すぐにコール音が切れる、どうやらメールを受信したようだ。

小さなディスプレイには「From:アルミ」の文字。

そして、もうひとつのケータイが鳴る。雌蠏のものだ。
彼に届いたメールの送信者の表示は「From:スチル」。

ふたりは愛おしそうにその文字を見つめ、すぐにメールを開いた。

どんどんと地上へと降りていく宇宙エレベーター。
一ヶ月ぶりに愛する妻と我が子に逢える。
はやる気持ちそのままにどんどんと加速する宇宙エレベーター。

普段は一般向けに鈍行する宇宙エレベーターだが本来はここまでスピードが出せる。

ついには地上からも肉眼で確認できる距離まで下降してきた。
地上からは瞳を輝かせてさっきの子供たちがそれを心待ちにして見上げている。

立ち上がるふたりの婦人。
空を見上げたまま棒立ちになっている我が子たちに声をかけた。

「さ、お父さんのお迎えにいくよ、アルミ!」

「ほらいくよ、スチル!」

宇宙エレベーターの搭乗施設に向かう母親たちをテッテと追いかける子供達。
それぞれの束ねられた髪がピコピコと揺れていた。

***



***

壮大な自然が織りなす風景美。そこには山も海も空もある。
新鮮な空気、心がドキドキする。胸が躍る。

そんな中を嬉々としてひとりで旅する少女がいる。
その両の手には、ふたつの随分と型落のケータイ。

場所が場所なので念のため、今しがた送信したメールの送信確認をする。
送り先までは時間はかかるみたいだけど確実に送信はなされているようだ。

誤字脱字がないか、念のために中身の文章にも確認をいれる。

「矧枷博士。わたしが今、どこにいるか当ててみてよ!」

「めか兄ちゃん!ぼくたちは今、とても奇麗なところにいます!」

この二通のメールが問題なくふたりの受信者に
出来るだけはやく届くように少女は心の中で祈った

「よっし!さぁーいくよ!」

位置のずれていた背中の重たいリュックをあらためて背負いなおす。
中身の荷物がガッチャガッチャと小気味よい音を立てる。

「あ、しまった。...割れたかな?」

ふと、思い出の中のあの少女が声をあげる。

(そんなの気にしない気にしない!)
(割れてたらもっといいのを創ればいいのよ!)

自分自身の想いなのにどうしてあのこの声で再生されるんだろう。

(あ、日が昇るよ!ほら、向こう!)
(はやく行こう!もっと先に!はーーやーーくぅ!)

少しずつ影が後ろに伸びていくのを感じる。
夜通し歩き続けたのもすべてはこの瞬間のためだ。

誰よりも待ちどおしかったこの瞬間、
この美しい朝日を誰よりもはやく観たいと一番想っていたのは私なのに。

私の中にいるあの日の少年のほうがもっと心待ちにしていたとは...

よし、行こう。一緒に行こう。どこまでも行こう。美しいものをたくさん観よう!

瀬良美「もっと!もっと!もーっと先まで行こう!」

***

えすぱあ:wonder2 おわり



posted by タナカリセ+タナカヤス at 08:51| えすぱあ:wonder2 | 更新情報をチェックする